I'm Swayin' in the Air

旅と音楽とフジロックとブラジリアン柔術

静カニ潜ム日々/The Present

present

あなたは「静カニ潜ム日々」という日本の至宝とも言えるバンドを知っているだろうか。たぶん大半の人は知らないだろう。ただ「熱いギターサウンド/緻密なリズム/激情系ボーカル」このあたりのキーワードにピンとくる人は絶対に聴いたほうがいい。度肝抜かれる。
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はじめて触れたのはFUJI ROCK2013


彼らの音に初めて触れたのはFUJI ROCK2013深夜のルーキーステージだった。

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散々ブログにも書いたが、僕はこの年「お一人様FUJI ROCK」という地獄と向き合っていたのである。「ねえねえ!レッドマーキーいこうよ!」「え〜おれNIN見たいわ」キャッキャウフフ。俺の前でキャッキャウフフするカップルや男女のグループが大量発生。

動機が激しくなってきて周りの情報をシャットダウンするためにイヤフォンしようと思ったが、FUJI ROCKの会場内でイヤフォンしているバカはいない。僕は仕方なく真夜中のオアシスで一人もぐもぐとおにぎりを食べて寂しさを紛らわしていた。

そんな深夜3時過ぎのルーキーステージで演奏始まったのが静カニ潜ム日々。精神に激しいダメージを受けていた僕はあまりの神々しさに「こいつらRadioheadじゃね?」という錯覚。彼らの文脈からすると相当間違った解釈をしているほど惚れ込んだのである。賛否両論あれど、フジロック2013 day1 のベストアクトは彼らだと思っている。

次にみたのは渋谷O-nest


次に彼らのライブをみたのがエネミーズ来日公演で共演していた渋谷O-nest。そこで僕は完全に彼らのことを誤解していたと自覚するのである。

そう、彼らは、僕も通過してきた90's EMOを洗礼を確実に浴びているに違いない。もちろんget up kidsやpromise ringといったポップなエモも通ってるだろうけど、確実にその景色はpenfoldやjoshuaやmineralを想起させる「DOGHOUSEレーベル臭」とも言える「乾いた爆音ギター」を主軸にしてきたエモを通過してきたのだろう。たぶん。そして僕は嬉々として彼らの作品「The Present」を購入した。最高だ。

The Presentがっつり聴いた

 

1.step forward


このアルバムは、1曲めの「Step Forward」でいきなり絶頂を迎える。この曲はマジですごい。イントロの上り詰めていくようなギターリフ。「ずっとギターを弾いてきて、自分で作ってみたかったけど僕には作れなかったリフ」とでも表現したくなるような絶妙なリフがいきなり遅いかかってくる。この曲聞いた瞬間の僕の嫉妬感は半端ない。上戸彩の旦那以上に嫉妬した。

そしてこの曲の何がすごいってこれだけかっこいいリフやメロディが畳み掛けるように襲い掛かってくるのに曲が2分31秒しかない。これだけ良いものを生み出すと、つい曲を冗長にしてしまいがちなのだがそこはあくまでもストイックに終わらせる。これこそ正しいエモのお作法。

そしてこの曲だけじゃないんだけど、彼らの曲はリズム隊が本当に通を唸らせる。特にドラムすげえ。昔のエモバンドだったら適当にスネア叩いてるだけのようなフレーズを、異常なまでにスネア連打させて「構成乱れるんじゃないか?」と心配にさせるほどギリギリのところまで攻めている。この辺は凡百のバンドとは違う鋭さを持っていると思う。

5.just follow me


このアルバムを通して僕の一番好きな曲が「just follow me」。中盤の、ジリジリとした軽めの歪みに、(おそらく)フロントピックアップで弾くアルペジオがめっちゃくちゃかっこいい。軽やかで暗い疾走感からのサビメロディ。ああああ!思い出した自分これに似た曲作ってたわ!クオリティはすげー低かったけど!ww

というわけでこのアルバム僕大好きなんだけど、何で好きなのかって自分がやってたバンド、こういう音出したかったのに出せなかったからだということをこのブログ書いててやっとわかった。だから異常なまでに好きなアルバムになってる。他の曲も圧巻の完成度だ。このアルバムは僕の中で「bluebeard/bluebeard」「season/grass and trees」に並ぶ「日本3大情熱系エモ名盤」だと思っている。

The Present
静カニ潜ム日々
RX-RECORDS/UK.PROJECT
2013-04-03




grass and trees
season
M-UP
2011-12-14





※Bluebeardは廃盤



90's EMOとは何だったのか?


ところであの頃のエモとは何だったのか?今の洒落っ気づいたメロディックパンクとはまったく違うジャンルなのだ。

アメリカの若者というとみんなビバリーヒルズ青春白書みたいな「ハ〜イ、エイミ〜元気かい?」「やあスティーブ!どうしたのクルマ買ったの?」「そうさ〜〜〜〜パパに買ってもらったのさ。どうだいエイミー?今晩ジムがパーティやってるから一緒にいかないかい?」「素敵!いくわ!」的な人間しかいないと思っていないだろうか?

残念だがアメリカにも、くっそださいメガネと服を着てスポーツも勉強もできないパーティにももちろん呼ばれないというどうやってもモテない若者はたくさんいるのだ。そんな彼らの鬱屈とした感情を「君はそのままでもいいんだ。世の中がクソなだけだ」というメッセージを轟音に乗せて表現したのがエモなのだ。




一番参考になるのがPenfoldというバンドのこの動画だ。時間があれば本当に見て欲しい。彼らの解散ライブだ。集まった客を見てくれ。デブ。ロン毛。ださいTシャツ。そんな彼らが、名曲「I'll take you everywhere」を一緒に歌ってるのだ。これがエモだ。

そしてクライマックスは3分50秒くらいから盛り上がっていくシーン。客の音への乗り方がまずださい。そして4分45秒あたりからくるピーク。こんな非リアな若者が全力でアンセムを合唱してる姿を見て胸が傷まないだろうか。いろんな意味で。僕はこんな音楽シーンが大好きだった。

Our First Taste of Escape
Penfold
2004-03-30



15年経過し、純粋に良質な音だけが残った


時は流れて2013年。もし90年代だったら劣等感にさいなまれて生きていったであろう「イケてない若者」も今では「オタク的なもの」として一つの文化にまでなっている。彼らは「生きにくさ」を音楽に投影する必要がなくなった。

そして静カニ潜ム日々による「90's EMOの良質な部分」を絶妙にブレンドした音楽はそういった文脈からは離れて「本質的にかっこいい音楽」として今後も人気を博していくに違いないと僕は確信しているのである。



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次回の「名盤探訪」は「Phoenix/Wolfgang Amadeus Phoenix」の予定です!お楽しみに!