僕のポケットにも90年代がいっぱい入ってます!
まもなく終わる2017年。今年はたくさんライブに行ったな〜、たくさんの良い音楽に出会ったな〜と自分の脳内を振り返っているのだけど、40歳を迎えてもなお新しい音楽を聴けることは幸せなのでは?と感じている。私的な話だがこれもひとえに自分の母親のおかげだと思っている。
1998年。僕は大学生だった。豊洲で開催されたフジロック、あの年の伝説ミッシェルガンエレファントのステージを知ってる人も多いだろう。僕もかなり前方で観てたけどこれ本当に死ぬかと思った。動画もあった。人のウェーブがまじでやばい。
[LIVE] TMGE - CISCO~G.W.D.~中断 (FUJI ROCK '98 in TOKYO)
その後wowowで放送されたダイジェストも録画して何度もリビングのテレビで観ていたのだが、たまたまリビングにいた母親が「この人たちかっこいいわね〜」と絶賛していた。当時51歳だった母はミッシェルファンになる耳を持っていた。
またある時母は、僕が愛用していたソニックユース「washing machine」Tシャツを勝手に着て電車に乗ったりしていた。これね。
「おかん、やめろや」
帰宅後僕は驚きながら進言したことを鮮明に覚えてる。電車内でソニックスのシャツ着てるおばさんとか攻め過ぎである(さすがの母も聴いてはいなかった)。
いずれにしても、そういう新しい音やデザインを愛する母の遺伝子を受け継ぎ、僕も先入観なく新しいものを今でも取り入れることができていると思うと大変感謝である。
さて、そんなわけで僕のようなおっさんが2017年何を愛聴していたのかをつらつらと書いていこうと思う。「ベストアルバム」とタイトリングしたが収まりが良かっただけでEPとかも入っている。もちろん時間や予算の都合で聴けてないマストリッスンな音源もたくさんあるんだけど、とりあえず今年出会えた運命に感謝感激。なおメジャーインディー自主制作などのカテゴリはまったく気にしてないので、あくまでも参考程度に読んでね。
Climb the Mind / チャンネル3
カルト的人気を誇ってきたClimb the Mind。待望の新作「チャンネル3」がリリースされた。このアルバムを聴いた瞬間の感情を僕は一生忘れないだろう。完全にジャパンインディーズミュージックの世界が一歩先に進んだ。未来の金字塔的・歴史的超絶名盤がここに誕生してしまった、とぶっ飛びまくったのである。初聴でここまでぶっ飛ばされたのは、個人的にはbloodthirsty butchersの「サンカク」(シングルver)を聴いた時以来かもしれない。
叙情的に掻き鳴らされるギターと、独創的なリズム。そして何よりも特筆すべき日本語ロックの極限に挑む、誰かの見ている景色を切り取ったような立体映像的な歌詞。電車の中で聴いた「ポケットは90年代でいっぱい」に、今まで愛聴してきた90年代のあのバンドやこのバンドの思い出がフラッシュバックしまくって嗚咽が止まらなくなりそうになって途中で聴くのをやめた。2017年、ここまで感情を振り切ってくる曲に出会えるとは思ってもいなかった。後半の疾走するパートに、もう聴いててノックアウト確定。
彼らにしか作れない独自の作品は、おそらく未来の人間が「えっ…!リアルタイムで『チャンネル3』聴いていたのですか!」とうらやむに違いない。いいだろー俺たち2017年にこのアルバム聴いたんだぜ。みんな、未来に向かって自慢しよう。
Climb The Mind ポケットは90年代でいっぱい @HUCKFINN 2017
9mm Parabellum Bullet / BABEL
どちらかといえば亜流と思われていたであろう9mm Parabellum Bullet(個人的に過去好きだったレーベル残響のイメージが強いという意味で)。独立後、レーベルにもシーンにもファンにも一切媚びることない音を鳴らし続けた結果、誰もついてこられない「独自の本流」を作りあげた感のある彼らが2017年にリリースした「BABEL」はおそらく9mm史上最高傑作の超濃密な作品となった。特に「ガラスの街のアリス」大好き。歌謡曲調感じさせるメロディに爆裂サウンドぶちこんでくるこの感じ、この世で9mmしか鳴らせない。
9mm Parabellum Bullet - ガラスの街のアリス
全て滝が書いたというハイクオリティな9曲の真髄は、初回盤のバンドスコアにその秘密が隠されている。作曲に加えて採譜まで滝本人がやってるらしい。すごすぎるだろ。相変わらずものすごい才能を、常人には理解できないぶっ飛んだ方向に発揮していて最高である。ギタリストは一度滝パートをコピーしてみることをオススメする。こんなフレーズを弾く人間が地上に存在することが驚きである。
ちなみに僕も、いつ9mmのサポートギターとして呼ばれてもいいようにバンドスコア見ながら「火の鳥」タッピングパートを死ぬ気でコピーしてみた。つぶ揃えるの難しすぎてこんなのライブで弾けるわけない。というかタッピングも難しいけど、めっちゃ早いコードストローク部分の方が弾けてない。ギターへたくそだな俺。新堀ギター通ってきます。
elephant / BASEMENT
「絶対に媚びない、音でリスナーを殺しにかかる系シリーズ」9mmに続いては、山口県が誇る鬼才elephantがリリースした「BASEMENT」がすごすぎてもはやポストロック界の松下村塾と称したいレベルでパーフェクトだった。
1曲目「thirst」から「いったいどういうことなんですか?」と質問したくなる(というか以前Vo/Gu森岡さんにお会いさせていただいた時、本当にそう伝えたw)。バンドメンバー全員で、楽器から鳴る音で殴り合うようなストロングスタイルなアプローチ。ただやりたい放題やってるとポップスにならず頭でっかちなポストロックになっちゃうけど、elephantは歌メロの美しさが際立っているので彼らは「歌ものバンド」であると断言できる。
そしてこのアルバムの圧巻は5曲目「Cocoon」の猛烈に複雑なリズムとフレーズの応酬だろう。Elephantを聴いたこともないくせにポストロック好き公言するような輩がいたら、この曲聴いて全員一回禿げ上がってくるといい。
I have a hurt / deep slumber
続いてピックアップしたいのは「2017年はこのアルバムのためにあったのではないか?」と思わせるほどヤバいクオリティの作品をついにリリースしたI have a hurt。バンド結成からずーーーっと正式音源をリリースしてこなかったのに、ライブで観客全員皆殺し的な音を出し続けてきてカリスマ化していった彼ら。
僕が初めて彼らを観たのが2015年渋谷キノトでのライブだった。ドラムのスティックカウントからの「最初の一音だけ」で殺されたのは初めてだった。しかもね、その日のイベントは僕が所属するThe Look at Me'sも出演していた。自分のバンドが終わった後そんな演奏見せられて死にたくなった。バンドマン視点からしても「何もかも敵わない…」と絶望に追いやられること間違い無しで、もう彼らとなんて絶対に共演したくない!(嘘。本当はまた共演したい。蜷川くんまた一緒にやろ)
うわあああああああああああああああああ!もう完全に絶望の深淵から、どうにかして這い上がろうとしてる歌詞とサウンドを体感セヨ。このアルバムははっきり言ってめちゃくちゃ暗い。全編ハードコア作品ではあるけど特に後半に向かうにつれて、ヒッチコックを観ているような不安な感覚に陥ってくる。爆発的に売れるような作品ではない。なお、僕は一度ジョギング中のBGMにこのアルバムを選んでみたが途中で体調悪くなった(笑)。そういう健康を目指す時に聴く音楽ではないのは確かである。
Vo/Guの蜷川くんはレコ発ライブの時MCで「瞬間的にたくさん聴かれるのではなく、細く長く聴いてもらいたいアルバムになりました」というようなことを言っていた。わかる。自分の体温を感じられる限り、この作品をふと聴くタイミングは多いと思う。
I have a hurtから速達で送られてきた66分に及ぶ憂鬱。
— g END otakebayashi (@GND_ZRM) 2017年9月28日
薄っぺらい他人の愛想笑いに満ちた同調を求め続けるくらいならとことん目の前の孤独と対峙して夜が明けるまでsad punkを奏で続けよう。
答えはいつかきっと見つかる。
傑作をありがとう。 pic.twitter.com/BiQ99zOFtz
何かを続けていると、良いことがあるんだな、とこのツイートを見て思った。
folio / LEADS TO EVERYWHERE
エモファンにとって、約9年ぶりにリリースされたfolioのアルバムが聴けるという事実だけですでに美味しいお酒が飲めるはずである。
「Begining of You」で聴こえてくるイントロから2本のギターのアルペジオ絡み合っていき、変拍子で広がっていく凍てつくような景色はまさにジャケット写真(American FootballやThe Promise Ringのジャケ写を撮影している Chris Strong 提供らしい!ビビる!)の美しさとシンクロしておりエモ充実感がどんどん高まっていく。4曲目「Discovering the Apple Between Oranges」のダンサブルリズム、その上を自由に駆け回るギターの音も最高だな。弾いててめちゃくちゃ楽しいんだろうな。
Tigers Jaw / SPIN
全然洋楽のことも書いてなかったんだけど、僕が2017年に一番聴いた洋楽アルバムは、今作からメジャーレーベル(Atlantic傘下Black Cement Records)でリリースされたペンシルバニア州出身インディ・ロックの星Tigers Jawの「SPIN」だ。既発アルバムも傑作だったが、今作「SPIN」は今までのエモポップな感じの曲はより際立った感じにさせつつ、少ししっとりと落ち着いた曲もバランスよく収録されている素晴らしい作品だった。いわゆるよくできたポップスとして愛聴される作品に仕上がったと思う。特に1曲め「Follows」はシンプルなコード進行(コピーしてみたけどほんとあっさりしてるのw)に、まるで初期The Get Up Kidsのような切なさと疾走感のあるエモバイブルになりそうな曲である。
まだ来日経験はないんだっけ?日本のインディ・ロックファンにもかなり有名だろうし、いつか日本で観られる日がくることを祈っている。
Tigers Jaw: June (Official Video)
大橋トリオ / BLUE
大橋トリオほど「ハズレなし」な作品を毎回リリースするアーティストはいないと思うが、2017年2月に発売された「BLUE」は大橋トリオ史上最高傑作だと主張したい。
「名盤の条件」は人によって異なると思うが、僕にとっての条件は「1曲目から3曲目まで文句のつけようがない名曲が続いてる」作品だと思っている。The Stone Rosesの1stなんかまさにそうだよね。The Get Up KidsのSomething To〜だって「Holiday」で完全にお前の耳は完全に蹂躙した状態になるし、そこからの「Action & Action」「Valentine」と続いちゃって、もうこの3曲だけで近代EMOの基本テンプレート作っちゃいました的な完璧さがある。
大橋トリオ「BLUE」もまさしく完璧な冒頭3曲で始まる。「Dolly」でまず恋に落ちる。「摩天楼バタフライ」のブラック感ある曲も大橋トリオの声がここまでフィットするとは、と驚くだろう。続く「Break out!!」はサビのメロディが2017年聴いた曲の中で最高に美しい。
そして後半も「タイムマシーン」「りんごの木」「The Day Will Come Again」と名曲が続きまくって気を抜くことができずに困る。良すぎて過呼吸になるリスナーいそう。
あとこの作品は、サウンドバランスがもう完璧過ぎて勘弁してほしい。僕はインディーズもメジャーも区別なく音を聴くようにしているけど、音圧に頼らずここまで良いサウンドを鳴らされると他の人がかわいそうになってくる(笑)芸術家として絶対に妥協しないクオリティをサポートし続けるレーベルはすごいと思う。
2018年も新作を出すという大橋トリオ。早く聴きてえ〜〜〜〜!
The Charm Park / The Charm Park
そして大橋トリオバンドでギターを弾いているチャームパークくんも新作ソロアルバムをリリースしたけどこれがまためちゃくちゃいいのである。全体的には北欧っぽさ(というかヨンシーのソロアルバムに全体的な質感が通じている)とエレクトロニカのエッセンスがブレンドされておりモダンポップスな感じに仕上がっている。
THE CHARM PARK「Fly Free」Lyric Video
「Fly Free」この曲の突き抜けていくサビメロの美しさと、2017年の作品にしては明らかに音がでかいギターソロが最高。チャームくんほんとギターうまくて大好き(当たり前だけど)。このアルバムは結構実験的な要素が散りばめられており、チャームくんの才能が爆発した傑作だと思う。
Charlotte is Mine / When The Daybreak Comes
僕の観測範囲の中で、期待値が完全に予想より上振れまくって手の届かないところにいってしまいそうなバンドが、既に多くの人に気づかれ始めているCharlotte is Mineだ。
2017年6月にリリースされた「When The Daybreak Comes」の美しいサウンドスケープとNana Furuyaの声が瞬く間に日本中に鳴り響き始めた。多くを語る必要はないと思うけど、この煌めいたガールズインディポップス感が日本から出てきたという衝撃に僕はちょっととまどいすら感じた。
Charlotte is Mine - When The Daybreak Comes -ep Movie Trailer
僕は某IT企業でエンタメ分野を業務として担当している。ときどき国内メジャーレーベルの方と仕事をすることがあるんだけど、先日仲の良い某メジャーレーベルの方と飲んでいたとき、その方からナチュラルにCharlotteの存在が言葉に出てきてビビりまくった。たぶん水面下では争奪戦が始まっているのだろう。
この記事を読んでほしい。たぶんだけど、僕は日本で初めてFuruya Nanaのことをメディア的な感じでインターネット上に紹介した人なんじゃないかという自負がある(笑)。僕は2015年3月に自分の所属しているバンドThe Look at Me'sで新代田FEVERでのブッキングライブに出たんだけど、そのイベントにはCharlotte is Mineも出ていた。これ書いちゃっていいのかなwえーと、Charlotte is Mine出てはいたんだけど今でも残っているメンバーはFuruya Nana1人で、他のメンバーは全然大したことないというか、ぶっちゃけると下手くそだった。
でも、僕とThe Look at Me'sのVoマークはNanaちゃんの凄さに気づいた。だから彼女と仲良くなり色々と話し込んだのである。びっくりしたんだけど、まわりのメンバー達はNanaちゃんに向かって「キミは下手だから修行してこい」とかわけのわからないことを言ってたらしい。僕とマークは「何言ってんの…Nanaちゃんの方がうまいじゃん…」とずっと思っていてひっそりと応援していた。当時から、彼女のギターコードワークは天才的だった。
それから数年経ち、Furuya Nanaは素晴らしいギタリストとテクニカルなドラマーに出会い、再び聴いたときは見違えるような素晴らしいバンドになって帰ってきた。経験値のあるメンバーを迎えてNanaちゃんも相当鍛えられたのだろう。もう僕みたいな錆びついたフレーズしか弾けない人間のアドバイスなんかいらないだろうし、彼女たちの上昇を近くて見ていたいと思っている。
Charlotte is Mine - Ship at Dawn(Short ver.)
12月に配信限定でリリースした楽曲も再びファンを刺激している。これからも止まらずに飛躍してくれることを祈っている。
Element5 The Look at Me's / 行くぜ、ロマンチック!
えっと…この記事に書くかどうか最後まで迷ったんだけど、もうここまでくるのに7682文字になっててどうせ誰も最後まで読まないだろうから書いちゃってもいいや!ということで紹介します。僕がやってるバンドThe Look at Me's、盟友のElement5と一緒にスプリットEPを2017年6月にリリース。作ってるときは「これすっげー作品できちゃうんじゃね」とトキメキが止められなかったけど、果たして誰かに「届いた」のか実は今でもよくわかっていない。というかたぶん名前を知ってくる人はいると思うけど、曲が刺さったのかどうか自信ない。けどたぶん良い作品なので聴いてくれる人が増えると嬉しいと思っているよ。
- アーティスト: Element 5 / The Look At Me's,Element 5,The Look At Me's
- 出版社/メーカー: Touch Me Not record
- 発売日: 2017/06/28
- メディア: CD
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以上が極私的2017年ベストアルバム10選でした。もちろんここに書いてないけど聴いた作品はいっぱいあります。他にも書きたかった作品はたくさんあるんだけどもう長すぎてしんどくなってきたので次の機会に書きますのでミュージシャンのみんな、これからも頑張って作品をリリースし続けていってください!おれもミュージシャンの端くれといて頑張ります。
それじゃ。