シアトルのインディーズカレッジポップとして活躍していたDeath Cab For Cutie。メジャーデビュー以降着々とセールスを伸ばし今やビルボード常連。そんなデスキャブの2015年3月に登場した「Kintsugi」(金継ぎ)を聴いたんだけどほんと脊髄震える傑作。今年これ超える作品出ないんじゃないの?
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デスキャブ、僕はメジャーデビュー以降どうも売れ線狙いというか、サウンド構築に"あざとさ"を感じることがあり熱心には聴いていなかった。特にバカ売れした「plans」あたりは正直何が良いのかさっぱりわからず以降ぱったりと離れてしまった。「やっぱりインディーズ時代が良いよね」というスノッブな発言を繰り返していた。ああ恥ずかしい。
しかし、今作品リリース前に先行登場したMV「black sun」のメランコリアはセールスの呪縛から解放された美しい曲だった。
ベンの歌声は相変わらず「カラッとした叙情性」に包まれており、散りばめられた電子音やギターのアルペジオは強めのリバーブなど空間を意識してサウンドメイクされている。構成もサビを強くするよりもシンプルなものにしてあり、サウンドの強弱をもってメリハリがつけられている。museなどをプロデュースしてるリッチ・コスティの手腕だろうか。
「あまりにも期待!」と思い、ようやくアルバムをフルで聴いたのだが、美しすぎるフレーズがアルバム中に満載だった。車の運転中に聴きながら、一人で「うわあああこれ最高だ!」なんて叫んでいた。
全編通して最初の印象は「超完成度の高いニューオーダー」みたいだなと。全然褒めてる感ないですね笑。でもほんとそう。最高だ…………。
ぼくの中でのハイライトは4曲めの「Little Wanderer」だ。創立メンバー・クリスの脱退は痛かったのだろうが、ギターのフレーズがむしろ完璧になってる。なんでこんなギターメロディーを人間が生み出せるのか。というかぼくもアルペジオ系ギタリストだけとこのフレーズを自分で生み出せなくてほんと嫉妬。
このアルバム、全編通してダウナービートと哀愁あふれるメロディで溢れてる。決して明るい音楽ではない。間違っても彼女とのドライブで聞くような音楽じゃないぞ。一人で、自宅で真夜中の寝られない時に聴くべき音楽だ。ツアーで早く来日してほしいね。
ちなみに彼らの最高作品は僕の中では2000年にリリースされた「We Have the Facts and We're Voting Yes」であると信じて疑わなかった。あれを超える作品は絶対出ないと。
インディーズ初期の無邪気な雰囲気と以降続く叙情性の結実は当時の僕らにとって最高到達点だったと思う。
一曲目の最初のアルペジオで既に絶頂だ。あまりにも暗く、シンプルであり、憂いさと冷たさを数少ない音数で表現されたこのアルバムは必聴だろう。
そして「kintsugi」はこの作品を明らかに超えたクオリティ。デスキャブと同時代に生きていて、「kintsugi」に出会えることを幸せに思いたい。